米司法省は23日、トルネード・キャッシュの創設者2人をマネーロンダリングと制裁違反、無許可送金事業の罪などで起訴したことを明らかにした。トルネード・キャッシュによって10億ドル以上の犯罪収益がマネーロンダリングされ、その中には北朝鮮のハッカーグループ、ラザルスの資金洗浄も含まれているという。
米司法省の発表によると起訴されたのは米ワシントン州在住の34歳のローマン・ストーム(Roman Storm)氏とロシア国籍の49歳のローマン・セミノフ(Roman Semenov)氏。ローマン・ストーム氏は23日に逮捕されたようだが、ローマン・セミノフ氏は逃走しているようだ。トルネード・キャッシュは追跡が可能な暗号資産の取引において匿名性を高めて追跡されにくくするミキサーと呼ばれるテクノロジーの1つで、イーサリアムのブロックチェーン上で動作するスマートコントラクト。米司法省によると起訴された2人はトルネード・キャッシュの創設者3人のうちの2人。2人は暗号資産取引におけるプライバシーの保護を名目にトルネード・キャッシュを運用していたが、ハッカーや詐欺師らによって資金洗浄のために使われていることを知りながら、法律で義務付けられている顧客把握プログラムやマネーロンダリング対策のプログラムを導入していなかった。
こうした違法取引の顧客の中には北朝鮮のハッカーグループ、ラザルスも含まれており、ラザルスは2022年4月と5月にトルネード・キャッシュを利用して数億ドルの資金洗浄を行っていたという。起訴された2人は制裁違反であることを認識しながらラザルスの資金洗浄を実質的にほう助していたとして起訴された。この事件の捜査はFBI(米連邦捜査局)とIRS(米歳入庁)が行っており、2人はニューヨーク州南部地区連邦地裁に起訴された。
トルネード・キャッシュをめぐっては、昨年8月に米財務省の外国資産管理局(OFAC)が制裁対象に指定、同月、オランダ当局がアムステルダムで開発者の1人で当時29歳のアレクセイ・ペルツェフ(Alexey Pertsev)氏を逮捕している。米財務省外国資産管理局は今回、起訴されたローマン・セミノフ氏を制裁対象に追加している。
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