無人島化の危機にある青ヶ島をDAOで島おこしプロジェクト(下) JPYC代表/岡部典孝氏に聞いた

無人島化の危機をレポートした2021年の記事では、「インターネットやSNSを活かして何かできることはないだろうか」という青ヶ島出身のドラマー、荒井康太さんの思いを取り上げた。岡部氏やNaruminさんらはすでに荒井さんをはじめ島民との交流も進めているようだ。Web3、ブロックチェーンは青ヶ島に何をもたらすのだろうか? 引き続き岡部氏に聞いた。

富裕層が移住やオフィス移転を検討中

青ヶ島にWeb3の波が押し寄せる?!

――青ヶ島をWeb3の特区にしたいということはわかりましたが、具体的にどのようなことが行われるのでしょうか?

岡部典孝氏「日本のWeb3は税制がネックになっていて、つまり税金が高いのです。税金が高くて日本ではやれないと皆さん外国へ行ってしまう。特区を作ってシンガポール並みに税金が安いとか、緩やかなライセンスでブロックチェーンの事業ができる、そういう場所があれば、みんな(日本に)帰ってきてくれるのではないか。東京でやるにはインパクトが大きすぎますが、青ヶ島なら自由にやれる余地があると思っていて、もっとも可能性があるのが青ヶ島ではないか。そういうことに多くの人が気づき、富裕層が移住を考えたり、資産管理会社やファミリーオフィスの青ヶ島への移転を検討しているのです」

――Web3、ブロックチェーンの領域で活動する企業や個人にとってより優位な環境で活動したいというのはわかりますが、一方で、村や既に住んでいらっしゃる方にとってはどうですか?

岡部氏「地方税は市町村が税率を決めますので、例えば青ヶ島村では地方税を1%安くする、実際にはもっと安くなるのでしょうけど、青ヶ島が先進的な自治体として税率を安くして優遇すれば、企業の移転によって税収増が期待できますから村の経済活動は広がっていくと思います。青ヶ島はこれ以上人口が減ったら村の維持が困難という限界まで減っているので村にとっても人口が増えて産業がおきるのはいいことだと思います」

――確かに青ヶ島が特区になれば移住や企業の移転にメリットが出るのかもしれませんが、現状での移住や企業移転にどのような意味があるのでしょうか?

岡部氏「ツイッターで調べたら移住を検討したい人は100人くらいの規模でいるんですよ。最初に移住する人は10分の1程度でしょうけど。すでにシェアハウスなどで10人程度は確保できていて、逆に10数人を超えると今度はキャンプ場を活用するか、住むところをつくらなければならない。しかし、移住する人を増やしながら村民との交流を深めつつ、この村に新しい産業をおこすことに理解を求めたいと思っています」

国家戦略になろうとしているNFTを青ヶ島で

――Web3、ブロックチェーンによる産業おこしって具体的にどのようなことが考えられるのですか?

岡部氏「今、NFTが国家戦略になろうとしています。我々JPYC出身の起業家もふるさと納税をすると返礼でNFTを渡しますみたいなことをやっていて、そうすると、まぁ、JPYCもこの後、ふるさと納税をJPYCでできますというサービスを始める予定もありますので、どうせふるさと納税をするなら青ヶ島村にふるさと納税をして、その返礼品として青ヶ島独自のNFTをお返しします、そんなことを最初にやるのも面白いと思います」

NFT(Non-Fungible Token)とは非代替性トークン、代替が不可能なトークン。トークンとは広義では暗号資産を意味する。既存のデジタル世界では複製が可能であったが、NFTはブロックチェーン上に記録されることから唯一性が担保され、NFTに紐づいたデジタルアート作品、NFTアートが高値で売買されるなど注目されている。

――それは産業としてはどのような産業になるのですか?

青ヶ島に初上陸した岡部典孝氏=本人提供

岡部氏「NFT製造という産業です。例えば今、青ヶ島には名産品として塩や焼酎がありますが、それにちなんだNFTを発行してもいいでしょう。いろいろアイデアはあると思います。一番は若い人が島にくることですね。島自体は今も財政は黒字ですけど離島振興による都予算が大きいわけで村自体が単独で成り立っているわけではない。村単独で黒字になるようにして交付税に頼らなくても自立した自治体として人口を増やしていける、そういう状態までできれば村にとってメリットは大きいと思います」

――さきほど国家戦略のお話しがありましたが、政府や政治の反応はどうなのでしょうか?

岡部氏「政治の動きとしては自民党のホワイトペーパーにDAOの特区を検討すべきみたいなことが盛り込まれていて、自民党の成長戦略にもDAOが入ってきていると聞いています。参院選の公約にも入ってくると言われています。政府でも岸田首相がNFTやWeb3を国家戦略にする指示を出しているところまではきていて、内閣府などで今、必死にキャッチアップをしています。私なども先端事例を教えてくれということで、DAOヶ島のことも含めてお話しをさせていただいています。基本的には国としては新しい取り組みをどんどん応援してイノベーションを起こしていこうという機運が高まっているところです」

DAOが自主的に運営していく自治形態も

――岸田政権が掲げる「新しい資本主義」「デジタル田園都市国家構想」が追い風になっていますね。

岡部氏「ですので、後はわれわれ民間が実際に行動をして特区の場所に実際に人が移り住んで成功事例を作ってWeb3に親和性のある議員さんや首長を増やしていくことが重要だと思っています」

――ところでDAOは分散型自律組織と言うそうですが、これは自治の在り方にも関わるのでしょうか?

岡部氏「最終的には議会で判断されることですが、地方自治法では町村総会を設置することができるようになっていまして、議会を廃止して村民みんなで決めるいわゆる直接民主主義に近い形態がとれるようにすでに現行法律上なっています。青ヶ島村が特区になり先進的な取り組みを進めていく中で、議会を廃止して村民みんなで決めていこうというDAO的な自治を目指す方向は可能性としてあるのではないでしょうか」

――DAOによって営まれる島、まさにDAOヶ島ですね。

岡部氏「そうなった場合まさにDAO的に村民が、例えば焼酎のDAOにお金を入れましょうとか、漁業のDAOに入れましょうとか、NFTをつくるDAOに入れましょう、そういう予算配分をした結果、DAOがそれぞれ自主的に運営していく、そのような自治形態もありだなと思っていて、そういうミニマルな小さな自治体で成功事例を作って、上手くいったら横展開をしていくというのが特区の趣旨にもかなっていると思いますので、そういった実証実験も社会実験っぽいところもありますが、まずは小さいところでやってみたいですね」

【岡部典孝】おかべ・のりたか。2001年、一橋大学在学中に有限会社(現株式会社)リアルアンリアルを創業、代表取締役/取締役CTO等経て取締役。2017年、リアルワールドゲームス株式会社を共同創業、取締役CTO/CFOを経て取締役。2019年、日本暗号資産市場株式会社(現JPYC株式会社)を創業、代表取締役。2021年、iU情報経営イノベーション専門職大学の客員教授、BCCC理事、DeFi協会・ステーブルコイン部会長。2021年12月、日本ブロックチェーン協会が主催する「Blockchain Award 03」のPerson of the Year(Japan)を受賞。

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