無人島化の危機にある青ヶ島をDAOで島おこしプロジェクト(上) JPYC代表/岡部典孝氏に聞いた

昨年、当サイトは「『還住の島』青ヶ島が人口減少で無人島化の危機」という記事を掲載した。それから1年を経てツイッターに青ヶ島のツイートが流れてきた。発信者はJPYC株式会社というスタートアップ企業の創業者で代表の岡部典孝氏。JPYCはブロックチェーン技術(ERC20)を活用した日本初の日本円ステーブルコインで、暗号資産のイーサリアム等の取引に利用可能だということなのだが、そんなクリプトなスタートアップ企業の代表がなぜ青ヶ島について発信しているのだろうか? 岡部氏に話しを聞いた。

インタビューは株式会社JPYCが入居している東京・大手町の大手町ビル4階にあるFINOLAB(フィノラボ)ロビーで行われ、同じく青ヶ島について発信しているNaruminさんがリモートで参加した。

ブロックチェーンで青ヶ島を盛り上げよう

――岡部さんとNaruminさんはどういう関係なのですか?

岡部典孝氏「青ヶ島をいっしょに盛り上げていこうという仲間ですね」

Naruminさん「今年1月頃に岡部さんが青ヶ島をブロックチェーンで盛り上げようと、ブロックチェーン技術を使ってデジタル化できないかと考えていらっしゃると聞いてインターネットでつながりました」

――もともとデジタル関係で付き合いがあったのではなくて?

Naruminさん「Web3の領域にあるブロックチェーンゲームのゲーマーが交流するギルドにYGGという世界最大のギルドがあって、僕はその日本版のYGGジャパンで活動していて岡部さんとは同じ領域にはいたのですが交流はありませんでした。岡部さんが青ヶ島を盛り上げようと言っていたので、それ面白いですねといってつながったのです。岡部さんが青ヶ島に何回も行ける人だとは思っていなかったので、とりあえず僕が(青ヶ島に)住んで島民の方とコミュニケーションとりますよ、ということで」

――岡部さんの呼びかけに賛同したということですか?

岡部氏「呼びかけたというより、理論的に可能なのではないか、その場所として青ヶ島が適切ではないかということを発信したわけです。そうしたら結構、賛同者がばぁーと集まってディスコードというチャットみたいな、スラックみたいなのがありまして、そこにコミュニティができたんですね。今は1000人くらい参加していまして、(Naruminさんは)その1人です」

以下の【DAOで島おこし!】と銘打ったツイートは今年1月20日の岡部氏のツイート。「DAOケ島のDiscordを作って頂きました。DAOでの島おこしに興味がある方、是非お越し下さい」とある。DAOとはDecentralized Autonomous Organizationの略で日本では分散型自律組織と訳されている。DAOはブロックチェーンのテクノロジーによって構築され、ブロックチェーンにより創造される世界はWeb3などとも呼ばれている。ディスコードにはDAOによる島おこしについて交流するDAOケ島プロジェクトのコミュニティができており、その候補が青ヶ島になっているようだ。

自治体の協力を得て特区を作る

――Web3、ブロックチェーンでつながっている皆さんに青ヶ島がいいねという共通の認識があったということですか?

岡部氏「そうです、そうです。Web3をやるとしたら、まず人数が少ないところを特区にしてやるのがふさわしいという部分はみんな同じ思いですね。人によって何をやるのかは違うわけです。移り住みたいという人もいれば、特区として実証実験に企業として参加したいという人もいて、そこはさまざまですけど。青ヶ島面白いから行って盛り上げたいみたいな思いは共通です」

――でも青ヶ島は都心から360km、交通の便もいいとは言えず行くのも大変です。そんな青ヶ島に注目される理由を教えてください。

岡部氏「Web3を強力に推進するためには自治体の協力を得てWeb3の特区を作ることが大事だと思ったのです。海外ではブロックチェーンを推進する市長もいますし、大きな話しだとエルサルバドルは大統領が推進するみたいなそういうことになっているわけです。しかし、日本だとWeb3を推進する政治家があまり出てこないのではないか、という危惧がありました」

――エルサルバドルはビットコインを法定通貨にしてニュースにもなりました。

【岡部典孝】おかべ・のりたか
2001年 一橋大学在学中に有限会社(現株式会社)リアルアンリアルを創業、代表取締役/取締役CTO等経て取締役。
2017年 リアルワールドゲームス株式会社を共同創業、取締役CTO/CFOを経て取締役。
2019年 日本暗号資産市場株式会社(現JPYC株式会社)を創業、代表取締役。
2021年 iU情報経営イノベーション専門職大学の客員教授、BCCC理事、DeFi協会・ステーブルコイン部会長
2021年12月 日本ブロックチェーン協会が主催する「Blockchain Award 03」のPerson of the Year(Japan)を受賞。

岡部氏「特区申請には議会の理解が必要ですが、高齢の議員さんから賛同を得るのはハードルが高いと思っていたのですね。人口の少ない自治体で首長さんも議員さんもWeb3推進みたいな自治体だとスタートアップやDAOを志す人にとっては自治体といっしょに取り組みやすくスピーディに特区申請や実証実験が進むのではないかと思い人口が少ない自治体を調べたのです」

――まずはWeb3、ブロックチェーンの特区を日本に作りたいということですね?

岡部氏「そうすると青ヶ島が圧倒的に少ない、170人程度の人口です。しかし若い世代が多い島でもあるので可能性があるのではないか、ということでさらに詳しく調べようということになったわけですね。それで今年2月に実際に青ヶ島に行って調査をして、村の人とも話した結果、やはりここが一番、日本ではWeb3にふさわしい場所だと確信するに至ったわけです」

――青ヶ島は行政的には村になるのですね。

岡部氏「東京都青ヶ島村になります。八丈島からもかなり離れた完全に独立した経済圏になるわけですね。そういった意味でも今までも自給自足的な部分があって、ある意味辺境の地だからこそフロンティア精神にあふれた方々やその子孫の方々が住んでいるのでちょうどいいのかなと」

7月から青ヶ島に移住します

――実際に今年2月に青ヶ島に行かれたということですが、その時はどのようなことをされたのですか?

岡部氏「2月に初めて行きました。約1週間ですね。コロナの時だったので、1週間、普通のワ―ケーションのような形で仕事をしつつ、時々、村民の方と交流しました。実際に真剣に交流したのはNaruminさんの方で、4月にコロナが明けてすぐに行ったんだよね」

Naruminさん「行く前に島民や村長さんとツイッターでつながることができたので、着いた翌日には村長さんともお話しできて。これいっしょにやりましょうと、例えば地域起こし協力隊とかも村長さんといっしょにやるお話しをさせてもらい、島民の方ともここにボク住んでいいですかとか、シェアハウスにみんなで住みましょうみたいな話しをその1週間でさせてもらい、そんな感じで島民さんや村長さんとつながることができました。で、7月には移住しようかなと思っています」

岡部氏「Naruminさんが行ったのをきっかけに村であまり使われていなかった建物をシェアハウスに改修しようという動きになって。それで6月の途中からは住めるようになるのですけれど、7月から行こうかという話しをしています」

――移住をされるのですか?

岡部氏「6月に投資家、富裕層の方が(青ヶ島に)視察に行くという話しもありますし、7月にはシェアハウスがオープンしますので、私とNaruminさんは7月に移住、生活の実態を青ヶ島に移す予定です」

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