福島第1原発処理水の海洋放出でアノニマスの攻撃激化も―NTTセキュリティ

東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出に関し国際的なハッカー集団、アノニマスが攻撃を過激化する恐れがあるとNTTセキュリティが指摘している。日本原子力研究開発機構等への攻撃を示唆しているという。

日本政府は2021年に福島第1原発の処理水を海洋に放出する方針を決定したが、NTTセキュリティによるとアノニマスはこの決定を非難し攻撃のターゲットリストを公表、東京電力や日本原子力研究開発機構、自民党など24組織をあげた。そして2021年4月22日から23日にかけてNuclear Energy Agency(NEA)や国土交通省に対してサイバー攻撃を行ったが、それ以降、攻撃は鎮静化していた。

しかし、今年1月以降、処理水の海洋放出への政府の準備状況についての報道が増え、それに伴いアノニマスが改めて海洋放出に反対する意見を表明してサイバー攻撃が再開されたという。NTTセキュリティによると今年7月以降、サイバー攻撃を示唆するアノニマスの投稿は増加しており、主にイタリアをバックグラウンドとするアノニマスからの投稿が増加しているという。

アノニマスはサイバー空間での政治的な大衆活動であるハクティビズムを代表するハッカー集団として知られ、これまで情報の自由などの主張を掲げてDDos攻撃やウェブサイトの改ざんなどのサイバー攻撃を繰り広げ2010年代に国際的に知られる存在になった。アラブの春と呼ばれた中東での民主化運動でもアノニマスの関与が指摘されている。しかし、サイバー空間で国家を背景としたハッカーグループやサイバー犯罪者の活動が増大したのに伴い、ハクティビズムの活動は鎮静化の傾向を見せていた。しかし、最近のアメリカにおける政治的、社会的な動向やロシアによる軍事侵攻などを機にハクティビズムは再びその活動を活発化させている。

NTTセキュリティによると、アノニマスは2022年のロシアのウクライナへの軍事侵攻に前後して大きく変化し、昨今の活動ではイスラム圏や開発途上国からの参加者が増え、イスラエルをターゲットにしたOpIsraelやインドをターゲットにしたOpIndiaなど宗教や地政学的な問題をテーマにしたキャンペーンが目立っているという。福島第1原発の処理水の海洋放出に反対するアノニマスの活動には様々なバックグラウンドのアノニマスが参加している実態があるとみられ、NTTセキュリティは今後、攻撃が過激化する恐れもあるとしている。

■出典

https://jp.security.ntt/insights_resources/cyber_security_report

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