北朝鮮がなりすましでITワークを受注して不正に収益を得ているとして米司法当局は、制裁違反や通信詐欺、マネーロンダリングなどの罪で北朝鮮国籍の14人をミズーリ州セントルイスの連邦裁判所に起訴したことを明らかにした。
米当局が起訴したのは、中国・吉林省の延辺朝鮮族自治州にある北朝鮮のフロント企業、延辺シルバースターネットワークテクノロジー有限公司(別名チャイナシルバースターまたは延边银星网络科技有限公司)と同社の関連会社でロシア・ウラジオストクを拠点としているヴォラシスシルバースター(Volasys Silver Star)のトップや両社を統括する幹部3名のほか両社のチームリーダーやスタッフら11人の計14人。米司法省のプレスリリースなどによると2社は少なくとも130人の北朝鮮人のIT労働者を雇用し、盗まれた個人識別情報(PII)を使ってアメリカ人などになりすまして世界中の企業からITワークを受注、海外に協力者を募って協力者のオフィスや自宅のパソコンから遠隔操作で作業をしていたほか、偽のIT企業のウェブサイトを制作して身元や実績を偽装して海外企業から仕事を得ていた。
なりすまして行ったITワークで得た報酬は中国にある口座に送金された後、北朝鮮の国家収益となり、国連が禁止している核・弾道ミサイル開発計画、通常兵器や軍事装備品を賄う資金になっているという。2社ではスタッフをIT戦士と呼び、社会主義コンテストが開かれ、スタッフの中には月に1万ドルを稼ぐように命じられている者もいるという。不法収益は2017年4月から2023年までの約6年間で8800万ドル(約138億円)にものぼるとみられている。
起訴を受けて米連邦捜査局(FBI)は14人の顔写真入りの手配書を公開した。また、米国務省外交保安局のRFI(正義への報酬)プログラムでは延辺シルバースターとヴォラシスシルバースターの2社やその幹部やスタッフに関する情報提供に対して最大500万ドルの報奨金を用意している。この問題に対しては、2018年9月に米財務省外国資産管理局(OFAC)が延辺シルバースターネットワークテクノロジー有限公司とヴォラシスシルバースターの2社と幹部1名を制裁対象にしたことを発表、2023年10月には17のウェブサイトのドメインがミズーリ州の連邦地裁の決定にもとづいて差し押さえられている。また、国連安全保障理事会は2017年の決議第2397号で、海外の北朝鮮労働者が得た収入が北朝鮮の核兵器と弾道ミサイル計画に寄与していると認定している。
■出典・参考
https://rewardsforjustice.net/rewards/yanbian-silverstar-and-volasys-silverstar/