全日本吹奏楽コンクールを朝日新聞社と主催している一般社団法人全日本吹奏楽連盟(東京市千代田区、石津谷治法理事長)が給与や賞与を不正に受給していたとして元事務局長らに計約1億5000万円の損害賠償を求めている民事訴訟。3年8ヵ月間にわたり東京地方裁判所で争われてきたが弁論終結した。
この裁判は、2020(令和2)年1月に全日本吹奏楽連盟の当時の理事長で2021(令和3)年12月に亡くなった丸谷明夫氏が会見を開いて明らかにした不正受給問題を受け、連盟が懲戒解雇にした元事務局長と元事務局次長、辞任した元監事の税理士3人に計約1億5000万円の損害賠償を請求しているもの。2020(令和2)年3月に連盟が東京地裁に提訴し、コロナの影響もあり判決まで4年の年月を要する長期訴訟となった。
このほど行われた審理では、被告の元事務局長側が給与や賞与の増額は、先任の事務局長が引退して事務局の職員が減り仕事量が増えることなどを理由に平松久司氏(故人)が理事長だった時に増額交渉をして了解され、後任の丸谷明夫氏にも引き継がれたなどと主張。一方、原告の連盟側は問題が発覚した後、存命中の平松、丸谷氏に聴取を行った際に両名ともに給与の引き上げを認めた覚えはないなどと話したことを明らかにして双方の主張は真っ向から対立した。
増額された給与に対して理事長の決済印がないとの連盟側の指摘に対しても、元事務局長側は決済印がないのは増額が理事会に諮られていなかったためで、時期を見て理事長が理事会に諮るものと考えていたなどと主張、伝票や総勘定元帳などから給与を増額していることはわかったことだとして、隠蔽して行っていたことではないと主張した。また、監査でなぜ明らかにならなかったのかという点について元監事の税理士側は、税務署に提出された決算報告書は正当な内容だったことを強調、連盟における監事の役割が内部の正当性を担保するものではなくもっぱら税務署対策にあったことを伺わせた。また、元事務局次長側からは事務局長に従属する立場であったことが強調された。
審理は非公開で行われていたが双方の主張は折り合わず、和解協議に進まなかったことから口頭弁論が行われ11月22日に弁論終結となった。来年2月21日に判決が言い渡される。連盟が問題発覚後に再発防止のために立ち上げた第三者委員会(メンバー非公開)の報告書は、問題の原因について実質的な業務を事務局任せにしていた歴史的な風土をあげ「長期的・構造的なものに根ざしている」と指摘している。