7月に公開が予定されている日本のアニメ「魔導具師ダリヤはうつむかない」の制作が経済制裁を受けている北朝鮮のアニメスタジオのITワーカーに下請けされている可能性が指摘されていた問題で、アニメ「魔導具師ダリヤはうつむかない」製作委員会は6月7日、北朝鮮の制作会社の関与は否定できないとして該当部分をすべて国内スタッフにより制作し直した上で放送する、と発表した。
アニメ「魔導具師ダリヤはうつむかない」製作委員会が発表したリリースによると、同委員会で制作に関わったスタッフの調査を行った結果、製作委員会から制作委託を受けた颱風グラフィックス(東京都武蔵野市)から日本の別の制作会社に委託され、この制作会社から中国の制作会社に委託。中国の制作会社から別の中国の制作会社に一部の作業が委託されていたという。製作委員会が、すべての委託先に対して作業スタッフ特定のため関わったスタッフのリストの提出を求めたところ、応じない制作会社が1社あったという。このため製作委員会は北朝鮮の制作会社の作品への関与は否定できないと判断、回答しない制作会社が請け負った部分の制作をすべて国内スタッフにより制作し直した上で放送するとしている。
米国のシンクタンク、スティムソン・センターが運営する北朝鮮分析サイト38ノースは今年4月22日の記事で、北朝鮮のインターネットクラウドサーバーに設定ミスがあり、このサーバーで保管されているファイルが外部から閲覧できる状態にあったことが2023年後半にNKインターネットブログの運営者によって発見されたことを明らかにし、このサーバーを観察したところアニメーションの制作作業指示や作業結果を含むファイルのやりとりが行われていたとする内容を報じた。
それら指示書は中国語で行われており、韓国語の訳がついているものもあったという。それらアニメはいずれもアメリカやイギリス、日本のアニメで、「魔導具師ダリヤはうつむかない」もその中の1つとして指摘されていた。アニメ「魔導具師ダリヤはうつむかない」製作委員会は、「今後のアニメ制作におきましては、委託先も含めて適正な制作プロセスの徹底につとめてまいります」としている。
この問題とは別に米当局は、経済制裁を受けている北朝鮮のITワーカーがサイバー上でアメリカ人などになりすましてアメリカをはじめ海外の企業から仕事を受注し、その収益がミサイル開発などの資金源として使われているなどとして警戒を強めている。