民主化を求める民意を区議会選挙で示した香港。犯罪者を中国本土に引き渡すことを可能にする逃亡犯条例改正案を契機とした抗議運動に対し香港警察は暴力的な鎮圧に乗り出し、一方で不審死や不可解な「自殺」の増加、複数の警察官による女性への性的被害の訴えなどが起きて香港社会は混沌とした中にある。この間、一連の香港情勢を日本に伝える報道機関であるNHKの報道に対し「印象操作ではないか?」「違和感を感じる」などの声があがっている。
「この日は一生忘れない」との一文とともにツィッターにあげられた動画。デモ参加者とみられる人たちに複数の白いTシャツ姿の男たちが棒のようなものを使って激しく殴りかかっている光景が映し出されている。ツィッターにはさらに「中国マフィアの無差別攻撃」「永遠に繋がらない警察の通報電話」「わざと閉門した警察署」などの文章も。
7.21、この日は一生忘れない。
中国マフィアの無差別攻撃
それを見逃す警察
永遠に繋がらない警察の通報電話
わざと閉門した警察署
4ヶ月経って、起訴人数はただの6人、警察とマフィアはぐるのはこんなに露骨に出来るとは恐ろしい
We won't forget
We won't forgive#香港デモ #721元朗 pic.twitter.com/sQFuwUhQpR— ken (@FreedomonohKen) November 21, 2019
ツィッターにあげられている動画は今年7月21日の香港での出来事を撮影したものとみられる。米ニューヨーク・タイムズは同日の様子を現地取材の動画で克明に報じている。そこには数多の白いTシャツ姿の男たちが棒を振り回して無差別にデモ参加者を襲撃している様子、Tシャツ姿の男たちの襲撃を止めない警察官が映し出されている。さらにデモ参加者が応戦してもみ合いになったころを見計らって、Tシャツ姿の男たちと入れかわるように香港警察の警察官が登場する様子まで記録されている。つまり、デモ参加者たちの応戦をあたかも暴動のように演出し、頃合いをみて香港警察の警察官が登場したのだ。こうした報道を知れば、逃亡犯条例改正案に反対して抗議行動をしていた人たちが、香港政府が逃亡犯条例の改正を断念した後も香港警察に対する検証などを求めて激しく抗議をしている理由が理解できる。
だれが最初に暴力を働いたのか?そして香港警察はどのように対応したのか?
‘Please Stop Beating Us’: Where Were Hong Kong’s Police? https://t.co/mVrl4AE0dQ— nonfiction J (@nonfictionJ) November 25, 2019
しかし、NHKは6月12日のニュースウオッチ9では「香港デモ一部が暴徒化」と報道。デモをしていた人たちが過激化して暴徒化したかのような印象だ。ツィッターには、「ドイツでは『警察がデモ隊に暴力も辞さず』と報道した」との指摘もあり、「日本のマスコミは中国共産党寄りの報道しかしない」「NHKは日本では反権力側、中国では権力側にたつ」などといったコメントもつけられている。NHKは11月20日のNHKおはよう日本では、香港理工大学に学生が立てこもり警察が強制排除に乗り出したと報じた。このニュースを見る限り、暴徒化した学生たちが大学にたてこもり警察に抵抗しているとの印象だ。
NHKおはよう日本 11/20 ①
立てこもりが続く香港理工大。
若者たちは
【バリケードを立て、立てこもり+複数で火炎瓶投げて応戦】
警察が排除を求める行動をし、18歳以下は帰宅。ん?いきなり中国人が喜ぶ報道してるな。
暴徒VS警察の構図じゃないんだから。警察が悪だろ。 pic.twitter.com/jMzootVoFv— KITORI@关西大阪 (@y2tor6) November 20, 2019
一方、民主化運動をしているアグネス・チョウ氏は日本のニュース取材に対し「穏健的なデモが急進的なデモになってしまった理由は警察の暴力がどんどんエスカレートして、最前線に立っていた仲間たち、デモの参加者たちも自分を守るために反撃をしなければいけないという危機感というか恐怖感から急進的なデモになった」と話し、今後のデモの在り方についても警察の対応次第との見解を示している。
NHKが香港政府寄りの一方的な報道をしている理由は定かでないが、考えられるのは、ツィッターのコメントにあるような中国政府に対する「配慮」が報道にあらわれていることもあるかもしれないが、あるいはニューヨーク・タイムズのように騒乱の渦中で取材をしていないため情勢が正確に把握できていないのではないか?ということもある。しかし、いずれにしても公共放送局を名乗る機関の報道としてはあまりにお粗末ではなかろうか?