鑑定業者に働きかけて不動産価格を高く設定  中部電力系REIT運用会社に対する行政処分

エスコンアセットマネジメント(東京都港区虎ノ門、鍵山武治社長)は2014年に設立された不動産投資信託(REIT)の運用会社だ。REITとはReal Estate Investment Trustの略で、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産等を購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品を言う(一般社団法人投資信託協会)。アメリカで生まれた仕組みで、日本ではJ-REITと呼ばれている。

エスコンアセットマネジメントのウェブサイトによると、同社は不動産販売、不動産賃貸、不動産企画仲介コンサルなどを行っている株式会社日本エスコンの100%子会社で、グループ会社にビル管理業務などを行っている株式会社エスコンプロパティ、株式会社エスコンリビングサービスなどがある。

エスコンアセットマネジメントは2016年8月に設立されたエスコンジャパンリート投資法人の運用を行っており、これまでに取得し運用している物件は全国30件近くにのぼっている。金融庁は令和4年7月15日、エスコンアセットマネジメントに対し、証券取引監視等委員会の勧告にもとづき同年10月14日までの3カ月間、新たな資産運用委託契約の締結と不動産の取得にかかる運用指図を禁止する業務停止命令の行政処分を発表した。

金融庁によると、エスコンアセットマネジメントは親会社である日本エスコンから取得する不動産について、日本エスコンが希望する売却価格を上回る価格となるように不動産鑑定業者に対して働きかけを行っていたほか、不動産鑑定業者を選定する際は、複数の業者から概算額を聴取し、概算額がもっとも高い業者を選定していたにもかかわらず、その事実を伏せて不動産鑑定業者を不適切に選定し、日本エスコンの物件が同社の希望価格を上回る価格となるように図っていた。金融庁はこれら行為について、投資法人のために忠実に投資運用業を行っていないと判断、金融商品取引法が定める忠実義務に違反していると認め、行政処分となった。

日本エスコンは1995年に大阪市内にて株式会社デザート・インとして設立され翌1996年に株式会社日本エスコンに商号変更、大阪にて不動産事業を手がけ、2000年に東京に進出、2018年には中部電力と資本業務提携し、2021年に中部電力を割当先とした第三者割当増資を実施し、中部電力の連結子会社となっている。子会社のエスコンアセットマネジメントの行政処分を受けて日本エスコンは「指摘を受けた内容の本質、真因を踏まえ、グループ全体で法令遵守態勢及び内部管理態勢の強化を徹底し、改善策を着実に実行してかかる事態の再発防止に全力を挙げて取り組む」と表明している。

■出典

https://www.toushin.or.jp/reit/

https://www.fsa.go.jp/news/r4/shouken/20220715.html

https://www.es-conjapan.co.jp/corp/

http://www.es-conjapan.co.jp/corporate19950418/wp-content/uploads/f37c19e948d321d2e4a66324be696cab.pdf

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