慰安婦記事訴訟判決に対する会見動画まとめ

慰安婦記事をめぐる損害賠償請求訴訟の札幌地裁判決を受けて、日本外国特派員協会で11月15、16日に行われた原告および被告側の会見動画まとめ。

被告側\ジャーナリスト 櫻井よしこ氏

・慰安婦問題ですが、どんな事情であれ慰安婦になった女性たちに対しては心から同情し、このようなことがこれから二度と起きてはならないと思っています。いまだに売春ということが世界各地で起きていることに対して女性の人権に対する侵害との憤りを強くもっている。
・女性の人権はもっとしっかりと守られるべきだと固く信じている。しかし、そのことと日本軍が女性たちを強制連行して性奴隷にしたという間違った報道を許すということはまったく別のことだ。この点において朝日新聞と植村さんの責任は大きい。
・植村さんは元朝日新聞の記者。今は週刊金曜日の発行人でもある。植村さんはりっぱな言論人。言論人が言論で戦わずしてどうするのか。表現をする人が表現で戦わずしてどうするのかという疑問をもっている。
・言論人が自分の書いたことについて裁判所に判断を求めるというのは、言論人としての責任を放棄していると考える。
・植村さんの記事は朝日新聞の報道の全体像の中に位置付けて考えるべきだと思っている。吉田清治という嘘をついて日本国の名誉を傷つけた人が朝日新聞に登場したのは1982年だった。吉田清治さんは自分の本の中で、自分は日本軍の動員命令を受けて女子挺身隊として朝鮮の女性たちをかりだせという動員命令書を得て済州島に行ったと書いている。
・後に吉田さんはいろんなところで演説をしたりする中で、暴力的に女性たちをかりだしたということまで言っている。
・当時、多くの日本人がびっくりした。というのは日本では女子挺身隊という存在と慰安婦の存在は別物。にもかかわらず軍が命令で女子挺身隊の名で女性たちをかりだしてこいと吉田さんに命じたと彼は書いた。
・はじめのころは吉田さんが書いたことを多くの日本人は信じなかった。ところが朝日新聞は吉田さんのことをいろんな機会に複数回にわたり報道した。朝日新聞が記事を書いたことで、そこに真実があるのではないかと多くの人に思わせる結果になった。
・そうした空気の中で、吉田清治さんが朝日に登場して約9年ですかね。1991年8月11日に植村さんの記事が出た。その書き出しは以下の通り。日中戦争や第二次大戦の際、女子挺身隊の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた朝鮮人従軍慰安婦のうち1人がソウル市内に生存していることがわかり、と彼は書いた。
・強い違和感を抱いた。吉田清治さんが言った女子挺身隊として女性たちを連行したということが嘘だったということはそれまでにわかっていた。済州島の済州新聞という新聞があります。その女性記者が吉田清治さんの本が韓国語に翻訳されたのを読んで大変な怒りを抱いた。彼女は吉田さんが慰安婦狩りをしたという所をずっと訪ねてお年寄りに聞いたら、だれ1人そんなことはなかったと。こんな小さな村で女性が1人でも日本軍に強制連行されるようなことがあれば、だれも覚えているはずだけれどもそんなことはなかったと証言している。そのことを彼女は韓国の新聞に書いた。
・日本でも疑問をもつ人がたくさんいた。
・植村さんは法廷で、彼自身が、金学順さんが挺隊協の場でだまされて慰安婦になったと語って女子挺身隊の名で戦場に連行されたとは述べていなかったことを認めている。
・植村さんは、なぜ女子挺身隊という言葉を使ったのかということについて、韓国で女子挺身隊と呼ばれているところの慰安婦の意味で使ったと法廷で語った。そのうえでキムハクスンさんが法令にもとづいて連れて行かれた人ではないという認識がありましたと、植村さん自身が法廷で語っている。
・つまり朝日新聞が吉田清治さんを報道することによって女子挺身隊という名のもとに女性たちを狩りだしたという仮の話ができた。多くの日本人はまさかそんなことはないだろうと思っていたら、植村さんが、その具体的な証人がソウルに生きているんですという記事を書いた。
・吉田清治の朝日新聞の記事から32年がすぎて朝日新聞はようやく吉田清治関連のことは虚偽であったとしてすべての記事を取り消したわけです。このような枠組みの中で植村さんの記事が果たした役割、深刻な影響、そのことについて私は常に批判の矢を放ってきました。

主任弁護人 林いづみ氏

・この事件の出発点は1991年8月11日に植村さんが朝日新聞に書いた記事にある。その記事の前文において植村さんは、後にキムハクスンさんとわかる人が女子挺身隊の名で戦場に連行されて慰安婦になった。その慰安婦のうち1人がソウル市内に生存していることがわかり、と報道した。
・それから23年経って朝日新聞はこの記事について、この女性が女子挺身隊の名で戦場に連行された事実はありませんとして、この記事の中の「女子挺身隊の名で戦場に連行され」の部分を誤りとして訂正した。
・そこで植村さんが櫻井さんを提訴した名誉棄損事件のポイントは、植村さんがキムハクスンさんがケイフによって慰安婦にされたという事実、経緯を知りながら報じず、そして慰安婦と無関係の女子挺身隊の名で日本軍によって戦場に強制連行されたという事実と異なる本件記事を事実と異なることを執筆した、ということが本当であるかどうか、という点がポイント。
・結論として判決において裁判所は、櫻井論文に記述された事実は真実であると証明されているか、事実の重要な部分を真実と信じるについて相当の理由があると認めた。
・植村さんが事実でないということを知っていたかどうかを証明するのに一番いいのは、彼が聞いたというその聞き取りテープを聞くことだ。しかし、植村さんは裁判においても、そのテープのコピーは持っていないと答えた。
・聞き取りテープを彼が91年に聞いた時の彼のメモも残っていないと言った。
・そこで次に近いのは91年の時期にキムハクスンさんが直接語ったことを報道した内容になる。
・判決は当時のハンギョレ新聞、この聞き取りの後、平成3年12月に日本政府に対して訴えた裁判の訴状。弁護士がキムハクスンさんから直接聞き取って書いた訴状。それからウスキさんという方が平成4年1月5日付けにキムハクスンさんを取材した結果として報道した論文、この3つを証拠としてあげた。
・判決はこれら3つの資料は一定の信用性をおくことができる資料であり、被告櫻井がこれらの資料にもとづいてキムさんが人身売買によって慰安婦になったと信じたことについて相当の理由があると判断した。
・判決文の50ページでは、櫻井論文の中で平成3年訴訟の訴状の引用に正確性が欠ける点があるにしても真実であると信じたことについて相当性を欠くとは言えないと述べている。
・裁判官からの質問に対して植村さんは次のように答えた。この記事で自分が女子挺身隊の名で戦場に連行され、と書いたのは韓国で女子挺身隊と呼ばれているところの慰安婦として使いました。法令にもとづいて連れて行かれた人ではないという認識がありました。
・判決はこのようにも書いている。慰安婦ないしは従軍慰安婦とは太平洋戦争終結前の公娼制度のもとで戦地において売春に従事していた女性などの呼称の一つであり、女子挺身勤労令にもとづく女子挺身隊とは無関係であり、そのことを原告も知っていた。このような事実認定を前提として裁判所は、原告が慰安婦と挺身隊が無関係であることを知りながらあえてキムハクスン氏のことを女子挺身隊の名で日本軍によって戦場に強制連行されたと報じたと、ということを櫻井さんが信じたことについては相当の理由があると判断した。

原告側\元朝日新聞記者 植村隆氏

・今回の判決は不当な判決。私は控訴して高等裁判所で逆転を目指す。
・この事件は私が1991年に書いた朝鮮人元慰安婦のカミングアウトの記事について櫻井よしこ氏が捏造とレッテル貼りしたコラムを書いた結果、激しいバッシングが起きた。内定していた大学教授の就職の道が断たれ、非常勤講師として勤務していた別の大学への攻撃や娘を殺害するなどの脅迫状が送られるようになった。そのような騒ぎになった。
・2015年2月に札幌地方裁判所に櫻井氏と櫻井氏の記事を掲載した雑誌の出版社3社を名誉棄損で訴えた。この裁判の判決が9日にあり、裁判所は私の訴えを退け櫻井氏に責任はないとした。
・判決は櫻井氏が私の社会的評価を低下させたと認定した。また私の記事が捏造であるとは認定していない。
・ところが判決は櫻井氏について、私が捏造したと信じても仕方がないという判断で、櫻井氏の責任を免除している。
・私の記事を捏造と書くにあたって櫻井氏は私への取材も当時の勤務先の朝日新聞への取材もしていない。
・朝鮮人元従軍慰安婦の聞き取り調査をしていた韓国側団体への取材もしていない。
・判決が櫻井氏を勝たせるため直接証拠としたのは、たった3つの資料だった。当時の韓国紙、ハンギョレ新聞、当時の雑誌、月刊宝石、そしてこの元慰安婦が自分の裁判のために作成した訴状の3つだった。
・この3つの資料をもとに櫻井氏はこの元慰安婦は人身売買だから強制連行でないと断定し、植村はそれを知っていたのに書かなかったと主張し、だから植村は捏造したと批判した。
・しかし、ハンギョレ新聞にも雑誌にも人身売買という記述はない。ハンギョレ新聞と雑誌には日本軍による強制連行と読める内容があったが、櫻井氏はその部分を無視していた。元慰安婦の訴状については、自身の説に都合のいいように改竄して引用していた。
・改竄した点を私から指摘された櫻井氏は訂正に追い込まれている。
・櫻井氏は元慰安婦について人身売買の交渉であり、日本軍による強制連行はないから日本政府には責任がないかのような主張をしている。
・櫻井氏は、私の記事を捏造と決めつけ日本国と日本人の名誉が著しく傷つけられたと非難している。
・ずさんな取材で事実にもとづかない文章を書いた櫻井氏の責任を免除することは非常に危険だと思う。
・この判決はフェイクニュースの蔓延を助長しかねない。
・私は言論人、ジャーナリストとして言論の自由がもっとも大切だと認識している。しかし、それは事実にもとづいた取材を土台にしたものであることが当然だ。嘘やインチキをもとに一方的に他人を攻撃する言論の自由はあるべきではない。
・このような判決によって根拠薄弱な言論が横行することは日本社会にとって危険なことだ。
・このような判決が確定すれば慰安婦問題についての日本国内での正しい理解を妨げることになり、真の解決をさらに難しくすると危惧している。
・櫻井氏は人身売買だから日本に責任はないかのように主張しているがこれは明らかに間違い。人身売買で慰安婦にされたとしても戦時における性暴力者の被害者であることに違いはなく、大きな人権侵害だ。
・櫻井氏のような言説が日本に広まれば日本はますます国際社会から孤立し、慰安婦問題の解決が遠ざかることになる。

弁護団弁護士 小野寺信勝氏

・114名の弁護士がボランティアで参加している。
・ある表現が人の信用を下げた場合には名誉を棄損したその人が真実を証明しないといけない。櫻井さんは植村さんの名誉を棄損したので、櫻井さん側が植村さんの記事が捏造だと証明しなければいけない。
・判決では、櫻井さんは植村さんの捏造が真実であるという証明はできていないと認定されている。
・名誉棄損の場合、もう一つ免責される条件がある。その条件は、櫻井さんは植村さんが捏造したと信じても仕方がなかったと言える場合には櫻井さんは免責される。
・判決は、櫻井さんは植村さんの捏造を信じても仕方がなかったことを理由に櫻井さんの責任を問わなかった。
・この判決には問題があると考えている。ここでいう信じても仕方がなかったというのは無批判に信じてもいいということを意味するのではなく、合理的な資料つまり信頼するに足る資料や取材にもとづいて信じても仕方がなかったと言えることが必要。
・裁判所が採用した3つの証拠は、櫻井さんが恣意的な評価を加えていることが明らかになった。植村さん本人や朝日新聞、元慰安婦にも取材をしていない。
・このような証拠や取材をしていない調査手段に照らすととても植村さんの捏造が信用しても仕方がないと言える状況にはないと考えている。
・判決は櫻井さんがジャーナリストであることを考慮していない。表現をするにあたって適切な取材をすることが期待されているジャーナリストである櫻井さんの取材結果を無批判に裁判所が受け入れたことは不当な判断だと考える。

記者質問での植村氏発言

・私の記事は1991年8月11日の朝日新聞大阪本社版に出たのですが、そこでは「騙されて慰安婦にされた」と書いていて、私自身は強制連行とは書いていない。櫻井さんは私が強制連行と書いたということで批判している。私は強制連行と書いていないから許してくれという論法はとっていない。私は強制連行とは書かずに騙されたと書いたが、当時のキムハクスンさんを取材したさまざまな記者はキムハクスンさんが強制連行されたというような話しを書いている。例えば日本を代表する保守的な新聞である産経新聞は2回にもわたってキムハクスンさんに取材して強制連行と書いている。本来なら櫻井さんは産経新聞に向かって人身売買なのに強制連行と書いたのか、というべきなのですが、なぜか私を攻撃して上村が強制連行と書いたと言う。櫻井さんが人身売買の根拠にしている報道、ハンギョレ新聞と週刊宝石、それをきちんと読めば強制連行と読める。だから櫻井さん、あなたが言うような証拠では強制連行と書いていますよ、キムハクスンさんは強制的に連行された、意に反して慰安婦にさせられたということを言っていますよということを私は繰り返し主張している。

・吉田清治証言というものがあり、それは朝日新聞もたくさん報道している。私自身は吉田清治さんの取材をしたこともなければ、会ったことも記事を書いたこともない。朝日新聞が吉田清治さんの証言の記事を取り消した。私の記事については元慰安婦が証言をはじめたというのが私の記事でありまして、吉田さんの記事とはまったく別物だ。朝日新聞が吉田清治さんの記事を取り消したのを発表した日の新聞と、私が捏造でないと言う新聞の記事が同じ日の新聞に載った。それで私の記事が日本の名誉を汚したというような櫻井よしこさんをはじめとする人々のキャンペーンによって私自身が吉田さんの記事を書いたというように勘違いする人もいる。

・私がバッシングされているのは単純にひとつだけ。元慰安婦の女性がソウルで戦争が終わって46年ぶりに被害の証言をはじめたという報道でバッシングされている。

■参考\ニュース
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