宇宙ビジネスを現実にする米ベンチャーパワー

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アメリカの民間企業によるロケット開発競争。主役はITビジネスで成功を収めたベンチャー企業だ。ITテクノロジーからロケットテクノロジーへ。そのどん欲なパワーは新たな価値を創造し、本格的な宇宙ビジネス時代の到来を実感させている。

史上初、ロケットの洋上着陸

2016年4月8日、米宇宙企業のSpaceX社が、同社が製造するロケット「ファルコン9」の洋上着陸を成功させた。また、5月6日にはスカパーJSAT株式会社が保有する通信衛星「J-CAST14」を打ち上げ、その後、「ファルコン9」を大西洋上の台船に再び着陸させた。同社は、2018年にも同社の無人宇宙船「ドラゴン」を火星に送る計画だという。NASA(米航空宇宙局)の技術協力を得て新たな宇宙船「レッドドラゴン」にて火星探査に乗り出す方針を示しており、2002年の企業設立以来、民間企業としては驚異的なスピードでロケット開発事業を推進している。

一方、有人宇宙飛行事業に取り組んでいる米宇宙企業Blue Origin社も昨年11月に宇宙船「ニュー・シェパード」を上空100・5キロの宇宙空間に到達させることに成功、その後、カプセルをパラシュートにて着陸させ、ロケット部分も地上に着陸させることに見事成功した。さらに同社は今年1月、昨年11月に宇宙より地上に着陸したロケット「ニュー・シェパード」の再使用を試み、2回目の宇宙からの着陸を成功させている。SpaceX社を設立したのはPayPal社の前身のX.comを設立した企業家、イーロン・マスク氏。自動運転システムを取りいれている電気自動車メーカー、テスラ・モーターズの会長兼CEOでもある。また、Blue Origin社はアマゾンの設立者、ジェフ・べゾス氏が2000年に設立した企業。ITビジネスを成功させた起業家2人が作った宇宙・ロケット開発企業2社が、熾烈な開発競争を繰り広げているのだ。

ISSへの物資輸送に成功したSpaceX社

アメリカでは、2003年にNASAの宇宙船、スペースシャトル「コロンビア号」が空中分解した事故や2008年のリーマンショック以降の財政状況等により宇宙政策の見直しを迫られ、2010年にはオバマ大統領が新たな宇宙政策を発表した。この中で、アメリカ国内の宇宙産業の振興、国家政策における商業技術・サービスの積極的な導入、国際宇宙ステーション(ISS)への人・物資輸送の民間利用、宇宙の商業利用への国家干渉の排除等を打ち出し、こうした経緯を契機に宇宙ビジネスの機運が大きな高まりを見せている。昨年は、アメリカ議会にて小惑星の資源採掘を認める新宇宙法が承認され、同法はアメリカの西部開拓を推進したホームステッド法にもなぞらえられているようだ。

アメリカはシャトル計画の大幅な変更を迫られたことによりISSへの宇宙飛行士派遣はロシアのソユーズに、物資補給についても日本、欧州、ロシアの補給船に頼る等していたが、2012年5月にSpaceX社の宇宙船「ドラゴン」が民間企業としては初めてISSへのランデブー、ドッキングに成功、同年10月にはISSへの物資補給フライトも成功させた。設立10年のベンチャー企業が自前のロケットで打ち上げる宇宙船でISSへの物資補給を実現することに多くの専門家は懐疑的な見方を示していた。それだけに、その成功には日本のJAXA関係者からも驚愕の声があがっている。航空・宇宙産業を専門とする橋本安男氏は、従業員2000人にも満たない民間企業が国家プロジェクトで開発された宇宙船を凌ぐ宇宙船を開発したと指摘、「日本の『こうのとり』がH2Bロケットも含めて、総費用約250億円なのに対して、ドラゴン/ファルコン5型ロケットは、約107億円と半分以下である。まさに、『民間活力、恐るべし』」との文章をネットに寄せている。

ビジネスにも「開拓者魂」

車や航空機が1回しか使えなかったら、運送事業や旅客事業は成り立たない。ロケットを着陸できるようにして再利用を可能にすることはロケットや宇宙を民間事業として成立させる必須の取り組みと言えるが、従来、宇宙空間は国家が担う事業と考えられてきたことからロケットの着陸、再利用はそれほど一般にはクローズアップされてこなかった。その意味では、YouTube上に数多公開されているSpaceX社のロケット「ファルコン9」の洋上着陸成功動画やBlue Origin社の「ニュー・シェパード」着陸成功動画は、宇宙商業化の幕開けを告げる歴史的な映像と言えるだろう。それをベンチャー企業が主導しているアメリカ。洋上着陸の瞬間、ケネディ宇宙センターには「USA、USA」の歓声が沸き起こったという。

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